8月の誕生石は、ペリドット、サードオニキス、スピネルの3つです。もともとはペリドットとサードオニキスの2つでしたが、2021年12月の改訂でスピネルが加わりました。興味深いのは、この3つのうち2つが「他の宝石と間違われてきた歴史」を持つこと。イギリス王室の「黒太子のルビー」は、実はルビーではなくスピネルでした。鑑別技術が進んで初めて、正体が明らかになったのです。
8月の誕生石は3つあります。ペリドット、サードオニキス、そして2021年に加わったスピネルです。じつはこの顔ぶれ、宝石の「誤認の歴史」を語るうえで、これ以上ないほどに象徴的な組み合わせでもあるのです。王冠に輝くあの有名なルビーが、実はルビーではなかった——そんな話も交えながら、3つの石をご紹介します。
8月の誕生石は3つ
| 宝石 | 石言葉(伝承)と特徴 |
|---|---|
| ペリドット | 夫婦愛・和合・幸福。明るいオリーブグリーン。 |
| サードオニキス | 夫婦の幸福・結婚運。赤褐色と白の縞模様。 |
| スピネル | 勝利・成功・情熱・不屈。赤から黒まで多彩。 |
※石言葉は古くからの言い伝えであり、効果を保証するものではありません。
2021年12月、全国宝石卸商協同組合により日本の誕生石が63年ぶりに改訂され、10種類の石が新たに追加されました。8月に加わったのがスピネルです。この追加には理由があります。色の幅が広く現代の好みに合うこと、硬度が高く日常づかいに向くこと、そして——長らく他の宝石と混同されてきた歴史が明らかになり、独立した宝石として正当に評価されるようになったことです。
スピネル|王冠のルビーは、ルビーではなかった
イギリス王室の王冠の中央に、大きな赤い石が据えられています。「黒太子のルビー」と呼ばれ、数百年にわたって王室の至宝とされてきた石です。ところが近代になって、この石はルビーではなく、スピネルであることが判明しました。同じくエリザベス女王が身につけた「ティムール・ルビー」も、実はスピネルです。スピネルという名前で独立した鉱物として区別されるようになったのは、18世紀のこと。それ以前の時代には、赤く美しい石はひとまとめに「ルビー」と呼ばれていたのです。
これは、宝石の世界で鑑別がなぜ必要なのかを、何より雄弁に物語るエピソードといえます。王室が所有し、最高の目利きたちが扱ってきた石ですら、見た目だけでは正体を見誤ってしまう。色や輝きが似ていても、鉱物としてはまったく別のものなのです。ルビーとスピネルは、屈折率や結晶構造といった科学的な性質が異なります。それを測定して初めて、確かな区別ができるようになりました。現代の鑑別という技術は、まさにこうした歴史の積み重ねの上に成り立っているのです。
誤解のないように付け加えると、スピネルは「ルビーの偽物」ではありません。それ自体が美しく、価値のある宝石です。モース硬度は8と高く、日常づかいのジュエリーにも十分に耐えます。赤、青、ピンク、オレンジ、黒とカラーバリエーションも豊富。とくに血のように深い赤色のものは、非常に高く評価されています。加熱などの処理が施されることが比較的少ないのも特徴で、天然のままの美しさを求めるコレクターから、近年あらためて注目を集めている宝石です。
ペリドット|太陽の石と呼ばれた緑
ペリドットは、新緑を思わせる明るいオリーブグリーンが魅力の石です。和名は「橄欖石(かんらんせき)」。オリーブの実の色に由来する名前です。古代エジプトの時代から「太陽の石」と称され、闇を払う力があると信じられてきました。石言葉は「夫婦愛」「和合」「運命の絆」。古くから、大切な人との関係を穏やかに保つ石とされてきました。トルマリンやトパーズのように色の幅が広い宝石とは対照的に、ペリドットは明るいグリーン一色。その潔さもまた、この石らしい個性です。
じつはペリドットにも、混同の歴史があります。鉱物の成分が科学的に判別できるようになるまでは、トパーズやエメラルドと取り違えられることが少なくありませんでした。クレオパトラが愛したエメラルドは、実はペリドットだったのではないか——そんな説が語られることもあるほどです。もう一つ、ペリドットには驚くべき一面があります。地球の外からもたらされたものが存在するのです。宇宙から落ちてきた石鉄隕石のなかに緑色の結晶が見つかり、後にペリドットだと判明しました。宇宙由来の誕生石を持てるのは、8月生まれの特権かもしれません。
手入れの面でも、ペリドットには少し気をつけたい点があります。硬度はおおよそ6.5から7程度と、それほど高くありません。硬い宝石と一緒に保管すると傷がつくことがあるため、分けてしまうのが安心です。また急激な温度変化にも弱く、熱いお湯に浸けたり、超音波洗浄機を使ったりするのは避けたほうがよいでしょう。柔らかい布で拭くか、ぬるま湯で軽く洗う程度にとどめてください。
サードオニキス|縞模様が語る古代の記憶
サードオニキスは、赤褐色の「サード」と白い「オニキス」が層になって重なった、縞模様の美しい石です。この独特の層構造が、古代の人々に愛されました。層ごとに色が違うため、表面を彫り込むと、下から別の色が現れる——この性質を活かして作られたのが、カメオです。古代エジプトやローマ、ギリシャでは、装飾品として、また身を守る護符として身につけられてきました。印章を彫る石としても重宝され、権威の象徴でもあったのです。
石言葉は「夫婦の幸福」「結婚運」。ペリドットと同じく、絆や家庭に関わる意味を持つのが、8月の誕生石に共通する特徴といえるかもしれません。なお、縞模様が入っていないものは単に「サード」と呼ばれ、区別されます。縞の色が鮮やかで、境目がくっきりしたものほど価値が高いとされています。
3つのなかから選ぶなら
選び方のヒント
- 夏らしい爽やかさなら:ペリドット。明るい黄緑は8月の空気によく似合います。
- 日常づかいを重視するなら:スピネル。硬度8で丈夫、色の選択肢も豊富です。
- アンティークな趣が好きなら:サードオニキス。カメオなど彫刻品としての魅力も。
- 贈り物なら:ペリドットとサードオニキスは絆に関わる石言葉を持ち、記念の品に向いています。
3つとも正式な8月の誕生石ですから、どれを選んでも間違いではありません。色も雰囲気も大きく異なるので、自分の好みや使う場面に合わせて選んでみてください。他の月の誕生石は「誕生石一覧」でご覧いただけます。
ところで、なぜ8月の誕生石は「絆」に関わる石言葉が多いのでしょうか。ペリドットは「夫婦愛」、サードオニキスは「夫婦の幸福」。どちらも、人と人との結びつきを象徴しています。明確な理由は伝わっていませんが、夏の盛りに生まれた人へ、穏やかな関係が長く続くようにという願いが込められたのかもしれません。ちなみにペリドットは、結婚16周年を祝う記念石としても知られています。誕生石としてだけでなく、節目の贈り物としても選ばれてきた石なのです。
よくある質問(FAQ)
8月の誕生石は何ですか?
ペリドット、サードオニキス、スピネルの3つです。もともとは前の2つでしたが、2021年12月の改訂でスピネルが新たに加わりました。
黒太子のルビーはスピネルなのですか?
はい。イギリス王室の王冠にある「黒太子のルビー」は、近代の鑑別によりスピネルであることが判明しています。18世紀まで赤い石は一括してルビーと呼ばれていました。
スピネルはルビーの代用品ですか?
違います。それ自体が価値のある宝石です。硬度8で丈夫、色も豊富で、処理が施されることが比較的少ないため、近年あらためて評価が高まっています。
ペリドットにはどんな色がありますか?
明るいオリーブグリーンのみです。多くの宝石が色の幅を持つなかで、ペリドットは緑一色という珍しい特徴があります。和名は橄欖石(かんらんせき)です。
サードオニキスはどんな石ですか?
赤褐色と白が層になった縞模様の石です。層ごとに色が違うため彫刻に適しており、古代からカメオや印章の材料として用いられてきました。
3つのうちどれを選ぶべきですか?
どれを選んでも間違いではありません。爽やかさならペリドット、丈夫さと色の豊富さならスピネル、古典的な趣ならサードオニキスがおすすめです。
なお、スピネルには人工的に作られた合成スピネルも存在します。合成スピネルは他の宝石を模倣する目的で使われることもあり、天然のスピネルとは価値がまったく異なります。見た目で判断するのは難しいため、購入の際は、信頼できるお店で扱いを確認することをおすすめします。皮肉なことに、かつて他の宝石と間違われてきたスピネルが、今度は模倣に使われる側にもなっている——宝石の世界の奥深さを感じさせる話です。
まとめ|見た目だけでは分からない
8月の誕生石は、ペリドット、サードオニキス、スピネルの3つ。2021年に加わったスピネルは、長らくルビーと混同されてきた歴史を持ち、王室の至宝でさえ誤認されていました。ペリドットもまた、トパーズやエメラルドと取り違えられてきた石です。色や輝きが似ていても、鉱物としてはまったく別のもの——この事実こそ、宝石を科学的に見極める鑑別という営みが、なぜ必要とされてきたのかを教えてくれます。最後に、要点を振り返ります。
- 8月の誕生石は3つ
- 2021年にスピネルが追加
- 黒太子のルビーは実はスピネル
- スピネルは硬度8で丈夫
- ペリドットは緑一色・和名は橄欖石
- サードオニキスはカメオの材料
参考・出典
※石言葉や伝承は古くからの言い伝えであり、科学的な効果を示すものではありません。誕生石の制定内容は改訂される場合があります。